
葛飾区法人会に所属していた知人宅で松下幸之助さんのビデオを鑑賞したことがありました。
内容は、当時PHP研究所の社長をされていた江口克彦さんのインタビューでした。
涙ながらに話している江口さんの話に感動し、その後にメモしたことをまとめました。その内容をご紹介します。
エピソードを通して、社会人としての心構え、マナーなど大切なことが学べます。
米国未来学者ハーマン・カーンさん来日
松下幸之助さんのそばにいたPHP研究所の江口社長が松下幸之助についてお話をされております。
「人材育成、人を育てることに関して、いろんなやり方をし、コツもあったかもしれないが、松下はテクニックで人を育てたのではないと思うし、考えてなかったかもしれない」と言っています。
結果的に、本人に気づかせることを大事にされたのです。
本人に気づかせるように。
江口さんが松下さんの側にいるようになって4~5年ころ、ハーマン・カーンという人が、アメリカから来ることに。
日本に来たら松下幸之助に会いたいと。
それで京都の南善寺の近くの真々庵で会いましょうということに。
ハーマン・カーンが来日する7日から10日くらい前に、松下さんは、江口さんに質問します。
「今度な、ハーマン・カーンという人に会うんや。
君、ハーマン・カーンという人がどういう人か知ってるか?」
江口さんは、たまたま新聞かニュースで耳にしていたので、「ハーマンカーンという人は、21世紀は日本の世紀と言っている、アメリカ ハドソン研究所の所長で未来学者です」と答えると、
松下さんは、「あーそうか」と言われる。
次の日に同じ質問をされる
次の日になったら、ある時また、「ハーマン・カーンという人誰や?どういう人か知ってるか?」と江口さんに聞いてくる。
江口さんは、変だなあ、きのう聞いたのになあと思いながら、答えはそれ以上ないので、「ハーマンカーンという人は、21世紀は日本の世紀と言っている、アメリカ ハドソン研究所の所長で未来学者です」
と昨日と同じように答える。
3日目にも同じ質問をされる
三日目になったら又、「君、今度なハーマンカーンという人が来るんや?どんな人か君知っとるか?」と言うんです。
江口さん、頭にきまして、3日連続、3回連続ですから、「この人はなに質問してるんだろうと」思って、「忘れたんかなあ」と思ったり、「何で3日連続同じことを聞いてくるんだろう?」と腹がたった。
だけど、答えはひとつしかありません。
「ハーマン・カーンという人は、21世紀は日本の世紀と言っている、アメリカ ハドソン研究所の所長で未来学者です」と江口さんが答える。
松下さんは、何と言ったか。
「あーそうか」
江口さん、それを聞いて、また腹がたって、お腹の中で、「何で3回も聞くんだ!聞くんだったら真面目にきいてほしい!」と思った。
そして、その日の夕方、松下さんの車を見送る、その車の後姿を見ていて、江口さんはふと思ったんです。
「チョット待てよ」
「これはひょっとしたら、ハーマンカーンという人について、あんたもっと説明しろ」と言ってんじゃなかろうか、そうかも知れないと思って、江口さんはすぐ本屋に行って、西暦2000年というハーマンカーンが書いた本を買うんです。
買ったけれども600ページもある厚い本。
それを会社に戻って、読みはじめる。
ページをめくるだけでも時間がかかる。
それをレポート用紙3枚にまとめた。
まとめ終わったのが夜中の1時半くらい。
興奮していて眠れないので、練習がわりにレポート用紙3枚を読んで、カセットテープに録音しました。
明け方の5時までかかったそうです。
そしてウトウトして、朝起きて、会社に出かけました。
4日目は、なかなか質問してくれません
朝、松下さんのところに行きました。
朝8時前に行かなくてはいけない。
行く途中、ポケットの中のレポート用紙とテープを何回も何回も確かめた。
会社から真々庵に行く途中、何を思っていたかというと、「どうぞもう1回だけ、ハーマン・カーンという人は誰か聞いてください」
前の日の午後は怒って、腹立っていたんだけど、「どうか、もう1回聞いてほしい」と思っていました。
ところがなかなか聞いてくれない。
4回連続で4日目のお昼 食事前に松下さんが、「きみ、今度な」
江口さんは思わず、「ハーマン・カーンさんが来るんですね!」と。
松下さん「君、その人、どういう人か知ってるか?」
江口さんは、それを聞いて本当に嬉しかったそうです。
江口さんは、ポケットからレポート用紙を出して報告。
食事途中でしたが、箸をとらずに30分間聞いてくれました。
途中途中で「あーそうか、なかなか偉い人やなー」と言い、「君、21世紀は日本の世紀と言っとるけど、いろいろ条件があるんやなあ」と言いながら聞いてくれました。
最後に「よう分った、ありがとう」と言ってくれました。
その日は江口さん、大満足。
松下さんを自宅にお見送りして危うくカセットテープを渡すのを忘れそうになりましたが、
見送るときにポケットの中がカチャカチャ音がするので、そうだテープだと思って、松下さんに手渡しました。
翌日の出来事
翌日、松下さんの車が来た時に江口さんが車のドアを開けると、松下さんがだまって降りてきて、江口さんの前にすっと立ちまして、じーっと顔を見るんです。
その間、十数秒。
いつもだったら、おはようと言ってニコニコして降りてくるのに、何も言わないですから、
顔をじーっと見てるんですから、江口さんは、背中がジットリという感じです。
そしたら、松下さんが、江口さんの顔をしげしげと見て、何を言うかとゆうと、「君なかなかいい声しとるなあー」というわけです。
声がいいわけない。
何を褒めたかということは、江口さん、よく分かる。
よく気づいた。
よくやった。
内容も十分だった。
カセットに吹き込むこともよく気づいた。
あらゆることを褒めてくれたということが分かった。
声を褒めたんじゃないということは、言われた本人はすぐ分かる。
江口さんは言います。
「松下という人は、人材を育てることに非常に根気のあった人ですね。しかるということもその根気の中のひとつ。人を育てるのは、夏の芝生の雑草取りと一緒。1回言ったら終わり、1回教えたら終わり、ではない。何回も何回も教え、何回も何回も尋ねる。何回も何回もしかる。根気よく人を育てる。一瞬にして人が育つことはないと思う」
このような内容のビデオでした。
江口さんの著書にも載っているエピソードです。
最初は、何でおなじ質問をしてくるんだ!世間から経営の神様と言われているのに、自分に対して失礼じゃないか!と怒っていたのに、指摘されるのではなく、自分で自分の非を気づき、自分が気づいたことを、褒めてくれた。
それも、通り一遍の褒め方ではなく、松下さんの心、思いを分からせてくれる、自分だけにしか分からない褒め方。
繰り返しになりますが、涙ながらに話す江口さんの姿に感動しました。
相手に伝えるコミュニケーションは、テクニックの前に心があるのだな、と思えたエピソードです。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
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