
福岡伸一著『世界は分けてもわからない』には、「コンビニのサンドイッチはなぜ長持ちするか」と題する一文があります。
主に、ソルビン酸について書かれています。
コンビニのサンドイッチには、保存料のソルビン酸が使われています。
近隣のコンビニ、ローソン、ファミリーマート、セブンイレブンに行って確認しましたが、サンドイッチにソルビン酸が使用されているサンドイッチはありませんでした。
コンビニのサンドイッチの賞味期限は?
写真の惣菜パン(ウインナーパン)には、ソルビン酸が入っていましたが、ソルビン酸が入っているパンは、あまりありませんでした。
保存料は使われなくなっているようです。
さて、コンビニにあるサンドイッチ、賞味期限は概ね製造後36時間だとか。
実際には流通にかかる時間があるので、安全を考えて製造後72時間経過しても品質が変わらないような設計になっています。
製造してから丸三日、品質が変わらないためにどうしているのでしょう。
冷蔵庫などの密閉空間ではなく、しかも常温の室内に陳列されている食品です。
品質が保持できる理由は、商品の裏のラベルを見れば分かります。
ご存知のように、大量の食品添加物が使用されているからです。
3軒のコンビニを回って、サンドイッチには保存料のソルビン酸はありませんでしたが、保存料が添加されていない場合は、保存料の代わりにPH調整剤を使用しているのでしょう。
卵やハム、ツナなどをはさんだサンドイッチは、保存料やPH調整剤がなければ、空気中や手のひらなどに生息する多くの微生物、元々食材の中にある微生物が、サンドイッチの中で増殖していきます。
多くの微生物は温度などの生育条件が多少悪くても、細胞分裂によって無限に増えていきます。
倍々と増殖し、10時間後には千倍、20時間後には約100万倍にもなります。
肉眼では見えないからいいですが、倍々に増殖していく様が見えると卒倒してしまうでしょう。
日にちが経った食品が腐ったり、臭くなったりするのは増殖した微生物が硫黄のガスや粘液物質、毒素などを作り出すからです。
(ソルビン酸は水に溶けにくく、水溶性のソルビン酸カリウムとして添加されることが多い)
ソルビン酸の働きと人体への影響
ソルビン酸が、どうやって微生物の繁殖を止めているかというと、微生物の生育を妨げる働きがあるからです。
微生物が栄養を取り込み、代謝するためには酵素が必要です。
乳酸脱水素酵素が乳酸を、リンゴ酸脱水素酵素がリンゴ酸を代謝してエネルギー源になるところを、乳酸やリンゴ酸に似ているソルビン酸が間違って取り込まれて、微生物の細胞内の酵素が役に立たなくなります。
酢酸、酪酸、ピルビン酸など酸と名の付く栄養素には、―COOHのカルボキシル基があり、ソルビン酸と似ているのです。
ソルビン酸は多角的に展開して、微生物の酵素に取りついてその代謝反応をブロックすることができるのです。だからソルビン酸を食材の中に混ぜ込んでおくと、腐敗の進行をとめることができるのです。ソルビン酸は広範囲の加工食品に添加されています。ハム、ソーセージ、かまぼこなどの食肉・魚肉ねり製品、パンやケーキ、お菓子のあんやクリーム、チーズ。ケチャップ、スープ、半生んの果実類、果実酒、飲料・・・・・・食品の種類によって、1キログラムあたりだいたい1~3グラムほどのソルビン酸(重量比にして0.1~0.3%)の添加が認められています。
このソルビン酸は、食品に添加されている程度の量では、人間にとっては毒にはなりません。
体重が50キログラムの人が食べて、半分の人が死ぬ量、50%致死量は、368グラムになります。 食塩なら200グラム、重曹なら215グラムです。
368グラムのソルビン酸を食べるには、チーズで食べると、123キログラムのチーズを一気に食べないと、その量になりません。
科学者なら、ものすごく安全な物質であると判定するでしょう。
腸内細菌にとっては安全か?
ある食品添加物のメーカーのホームページには、 データやグラフとともに、ソルビン酸は、安全であると書かれています。
食品添加物の安全性は科学的に評価されています。 ここでは食品添加物の中で、保存料に分類されているものを例にとってご説明します。 例えば「ソルビン酸は体内に蓄積して害を及ぼす」といった誤解がありますが、 実際には体内で分解されるので蓄積されることはないのです。
科学的知見に基づいて書かれていると思います。
インビトロ、試験管の中での実験でも、安全であるとされています。 ですので、わたしも、身体に悪いから摂取するのはやめましょうとは言いません。
でも安全だから、どんどん摂取しましょうとも言うつもりはありません。
福岡伸一氏もも、このソルビン酸の項目のところの最後に、この腸内細菌にとっては、ソルビン酸を摂取することはどうなんだろう、と、疑問を投げかけられています。
たしかにソルビン酸は微生物に対しては毒として作用するが、ヒトの細胞には毒にはならない。インビトロによるヒトの細胞への直接実験でこのことは証明されました。しかしそれは、部分的な視野にもとづく思考であるといえるのです。 (ソルビン酸は)腸内細菌に対して影響を及ぼすことによって、間接的に害作用を及ぼす可能性があります。 たとえば抗生物質を風邪を引いたとき私たちは抗生物質を飲みます。抗生物質は微生物に対する強力な代謝阻害剤です。これによって感染症をもたらす微生物(病原細菌)を制圧します。(とともに腸内細菌叢に制圧します) これと同じことがソルビン酸によっても起こる可能性があります。 ソルビン酸は抗生物質と較べるとずっと弱めの阻害剤です。しかし一過性の抗生物質とは異なり、ソルビン酸は弱いとはいえ長期間、ずっと継続的に摂取するタイプの化学物質です。抗生物質によって一時的に制圧されても腸内細菌は抗生物質の服用が終われば、また復活して安定なコロニーを形成します。しかしソルビン酸のような、弱いながらも制圧作用を有する化学物質が長期間、日常的に腸内細菌叢に与える影響は全く解明できていません。腸内細菌のバリアーの破れに乗じて、外来の、より毒性の強い微生物が侵入する可能性があります。 ソルビン酸は、いつでもどこでも安価なサンドイッチを食べられるという便利さ=ベネフィットと引き換えに、最低限度の必要悪=リスクとして使用されているわけです。そしてソルビン酸の健康に対するリスクはそれほど大きいものとはいえません。 問題なのは、現代の私たちの身のまわりでは、リスクが極めて小声でしか囁かれない、むしろわざと見えないようにされがちであるということです。ソルビン酸は、加工食品の後ろに貼られているラベルの中にごく細かな字でしか表記されていません。そして私たちの多くはそこに注意を全く払っていないし、たとえソルビン酸という文字を見たとしてもその間接的な作用にまでは想像力が届かないということです。
少々長い引用となりましたが、福岡伸一氏が危惧されている、ソルビン酸のような、弱いながらも制圧作用を有する化学物質が長期間、日常的に腸内細菌叢に与える影響についてご紹介しました。
安全が確認され認可されている食品添加物であったとしても、長期的、日常的に摂取すれば身体に悪影響があるかもしれないですね。
そして、仮に悪影響が出たとしても、原因が食品添加物であると特定は困難です。 感染症やその他の病名がつけられ、原因不明ということになるのです。
福岡伸一氏が興味を持ったジンメンカメムシ
ベストセラー『生物と無生物のあいだ』や『動的平衡』などの著者 福岡伸一氏は、小さい頃から、自動車や列車の全面が人の顔に見えていたそうです。
そして、いつしか人の顔に見える画像をコレクションするようになったそうです。
そして、有りました、福岡伸一さんのコレクション。
お相撲さんの顔が背中にある昆虫が。
福岡伸一著『世界は分けてもわからない』の中に、私が書いたイラストのような虫が、写真で紹介されていました。
虫の名前は、ジンメンカメムシ。←写真あり そして、本題の「保存料ソルビン酸」の話は『世界は分けてもわからない』に。
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